ここ数年でマインドフルネスの知名度が飛躍的に高まりました。関連書籍は100冊を超え、ストレスから開放されたい私たちの関心を捉えています。
マインドフルネスは、マサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジンが「マインドフルネスストレス低減療法」を提唱したことがきっかけで、世界にその概念が広まりました。彼がベースにしたのは、彼自身が取り組んでいた仏教のヴィパッサナ瞑想でした。
マインドフルネスはヴィパッサナ瞑想をアレンジした瞑想のひとつなのですが、そもそも瞑想とはどのようなものでしょうか。「リラックスする」「心を無にする」「呼吸を大切にする」などの抽象的なイメージで語られることが多く、具体的なメカニズムについて解説されていることはほぼありません。
私は20年ほど前にヴィパッサナ瞑想を知り(当時はマインドフルネスという言葉は知られていませんでした)、その効果を実感して論文を書いたことがある程度にはマインドフルネスに信頼をおいています。本記事ではマインドフルネスの仕組みと効用について紹介します。

瞑想の理解のためには、脳の仕組みついて簡単に触れる必要があります。仕事に集中している時は脳を「使っている」状態で、寝る前にリラックスしている時は脳を「休めている」というイメージで捉えている方が多いと思います。しかし、脳の血流量を測定してみると、集中時もリラックス時も、いずれも脳は活発に機能していることがわかります。ただ、機能する部位が異なります。「集中」している時には不活性な内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉等が、リラックスしている時には活動を高めています。これらは「想像」に関わる部位です。
つまり、脳は「集中」している時は「いま、ここ」に、逆に「想像」している時には過去、未来、空想など「いつか、どこか」に意識が向かうようにできています。
脳に「集中」と「想像」という二つのモードが備わっているのは、進化の過程で獲得したものだと推測されます。狩猟時代、私たちの祖先は、昼間に狩りをする時には獲物に「集中」し、夜、食事を終えた後にリラックスしながら、今日の狩りの反省をしたり、明日の狩りのシミュレーションをするなど「想像」していました。「集中」と「想像」を使い分けて生き延びてきたのです。
「集中」も「想像」も必要な機能であり、正しく用いることができれば、私たちの人生をより良いものにしてくれます。しかし、「集中」を適切に用いることができなければ仕事中に気がそれてしまいますし、「想像」を適切に用いることができなければ、応用がききません。
これらの問題を解決するメソッドが瞑想です。瞑想にはリラックスするというイメージがあると思いますが、実際は呼吸など決められた対象に穏やかに「集中」し、リラックス時に生じる「想像」をしない取り組みです。
瞑想をした人に感想を聞くと様々なことを述べますが、その内容は「集中」を欠いたことにより生じた「想像」あるいは妄想であることがほとんどです。事実ととしてはただ座っているだけですから特に何もないはずです。特に何もないにもかかわらず、あれこれ「想像」して自ら苦しみを作り出しているということに気づくこと、気づき続けることが瞑想なのです。
飽食で安全な現代を生きる私たちの苦しみの多くは、空腹や怪我など「いま、ここ」における物理的な刺激によって生じているものではなく、脳がつくり出した「想像」=妄想に起因します。妄想を減らし、ストレスを減らすという瞑想のアプローチは現代に非常にマッチしています。

※瞑想に実際に取り組んでみたい方は、室長のカウンセリングを受ける中でその旨おっしゃって下さい。